アメリカでユースコーチ達と話していて必ず出てきた言葉に『ライフスキル』があります。具体的にはチームワーク、リーダーシップ、感情のコントロール、ゴールを達成する技術などで、それを身に付けることでプレッシャーの中でいいプレーにつながり、試合中に上手に成功と失敗のハンドリングをし、個人のジレンマを乗り越えて、チームでの役割を果たすことができます。
いままでこのコラムに登場した羽生選手、大谷選手、宮里選手、小平選手、長友選手などの多くの選手はまさに『ライフスキル』の強い選手たちです。
グールド博士はライフスキルこそスポーツをするユース選手たちに伝えるべき最も重要なポイントだと指摘しています。実際、アメリカの様々なスポーツで素晴らしいチームを作り選手を育てたジョン・ウッデンなどの偉大なコーチ達はプレーの技術面だけでなく、その指導の中でライフスキルをプレーヤーディベロップメントの中心に位置づけています。
また、ミシガン州立大学ユーススポーツ研究所のグールド博士は『トップクラスのスポーツの才能を持っているアスリートのなかにもライフスキルの欠如で(レベルの低さで)その才能を生かし切れていない選手がいる』としています。そしてユーススポーツの時期こそスポーツを通じてライフスキルを身に付けることをコーチがサポートするベストなタイミングです。
また、ライフスキルはまさにビジネスやその他の分野でも最高のパフォーマンスをするために必要なスキルです。そして、ライフスキルが開発される原則やコーチングストラテジーを学ぶことによっていろいろな分野で使える汎用性のあるスキルへと進化させることができます。
ライフスキルをコーチングするにはいくつかの難しいハードルがあります。その中の一つが事前に計画して今日はこれを教えたいというわけにはなかなかいかないということです。練習や試合のいろいろな状況に応じてその時々に最も効果的に判断し、反応する力を身に着けるためには、予め想定されたことをやっているだけでは難しいからです。そのためにコーチにも練習や試合の中でライフスキルを育てるためのトレーニングが必要となってきます。
記事だけではわかりにくいので、ライフスキルを取り入れたトレーニングを行っている桐蔭学園ラグビー部の映像がありますのでご覧ください。