ジュニアアスリートをかかえるお父さん、お母さんから
『最近伸び悩んでいるみたいだけど、なんて声をかけたらいいかわからない』
『うちの子頑張っているのになかなか試合に出られない』
『認められないことで自信を失ってしまうのではないか』
などという声がら聞こえてきます。
 
 USTA(アメリカテニス協会)選手育成部門でメンタルスキルスペシャリストを務める
ラウア博士が示すジュニアアスリートとのコミュニケーションのヒントに少々付け加えてご紹介します。
 
 ラウア博士とは同じ大学院時代を過ごしました。彼は本当にナイスガイで当時ラボダイレクターをしていていました。ジュニアアスリートのリサーチやトレーニングに興味が
あり、私も『Playing Tough and Clean Hockey: Strategies for Increasing Emotional Toughness』というジュニアのアイスホッケー選手のプログラムを手伝っていました。

写真は彼らにとって大一番の県大会決勝に臨む横浜ラグビースクールの選手たちです。
劣勢が予想されましたが、ラストワンプレーで逆転を果たし全国への切符を手にしました!
詳しい記事はこちらから
 ラウア博士はジュニアアスリートとのコミュニケーションにおいて大切なポイントを
以下のように提示しています。
1.注意深く聞く
  子供たちは本来試合の事をしゃべるのが大好きです。
  思いっきり話をさせてあげましょう!
  何をしゃべってくれるのかなと思いながら、まずは理解しようとしましょう。
  反応するのはその後です!
 
2.子供たちからプレーについて話させてあげる
  いきなり試合の細かいことを話さないで!
  ついつい『あそこちゃんとパス出さないと…』言いたくなりますよね。  
  子供は気持ちと混じって話すので、なかなか進まないかもしれません(笑)。
  子供たちにはその興奮が収まるまでの時間が必要なのです。
  でも、一生懸命話してくれようとするその姿勢はスポーツを好きになる方向に
  進んでいきます。
  試合の内容のことを子供と話したいと思ったら、2-3時間たってからでもいい
  でしょう。そのほうが、ご両親も落ち着いて話せます。
 
3.パフォーマンス、勝敗≠人間性
  ひどい敗戦や悪いパフォーマンスの後は、子供にアスリートとしての能力と人として
  の価値は関係ないことを伝えてあげましょう。明日はまた新しい日が来るし、ゴール
  への障害に打ち勝つためには一生懸命努力することが大切だと気づかせてあげま
  しょう。スポーツから来る悔しさやイライラに子供たちが立ち向かえるチャンスです。
 
4.正直に誠実に
  『いい試合だったよ』『ベストを尽くしたね』とついついいってしまいます。
  しかし、もし子供たちがそう思っていなかったらどうでしょうか?
  彼らを支えてあげることは大切です。しかし、あなたがそう思っていないことで
  かわいそうだからといって声をかけてしまうと、子供たちは敏感にあなたの
  ボディランゲージを通じてウソを見抜いてしまいます。
  スポーツのゴールは今の勝利や成功ではなく、スポーツを心底楽しめたり、
  成長してうまくなっていくことだと忘れなければ大切な声掛けやそれに伴うボディ
  ランゲージに繋がります。
  将来の子供たちの自己有能感を伸ばせるかどうかはここにかかっています。  
 
5.勝敗によって態度を変えない
  もし試合で勝った後にランチに行くなら、負けた後も行ってください。
  子供たちはこんなところからも何を大切にしていくかを学んでいきます。
  勝負はベストを尽くしてもいつも勝てるわけではありません。
  将来いつでも前を向いて進める選手になるのはこういう経験をたくさんした選手で
 す。
 
6.他の子供と比較をしない
  なぜ比較するのでしょうか?やる気を起こさせるため?
  たとえ練習方法といえども比較は子供たちには必要ではありません。
  子供には不必要なプレッシャーでしかありません。
  必要なのはなりたい自分を作り、そこに向かって自分のペースで進んで
  いくことです。それが将来子供たちの『なんとかなるかも』という
  自己効力感に繋がっていきます。
 
 ラウア博士のヒントからもわかるように、子供たちに何を伝えたいかが重要です。ジュニア世代はまずはスポーツを好きになって楽しんでもらうことが大切です。もちろん基本的な技術を身に付ける必要はありますが、そこに本当の興味や必要性が生まれるのはもう少し後になってからです。
 この世代で、練習や試合でうまくいかなかなくても、それ自体は大きな問題ではありません。この世代で身に付けたいのはやることに対しての『何とかなるという自信』です。それは結果が出るという自信ではなく、自分は何かできるのではないかというやる気や期待を持てるということです。
 
 子供たちが生き生きした表情で、自発的にスポーツを楽しめるようになることを意識してコミュニケーションを取ってみてください。子供たちを取り巻く大人のみなさんの心のザワザワ感を落ち着け、子供たちとコミュニケーションを楽しんでください。