ロシアW杯の最終予選の初戦、日本代表はUAEに1-2と敗れました。オリンピック代表も初戦ナイジェリア戦を落とし、このところ各世代のサッカー日本代表は重要な大会でいいスタートが切れていません。
『こういった相手に、戦い方どうこうももちろんありますが、それ以前に根本的な気合みたいな、根性みたいな…。危ないところで1歩足を出してつぶすとか、そんな負けず嫌いみたいなものが、90分の中の大事な場面で求められている。それが足りないのかなと思います』と日本代表の本田圭佑選手は試合後に語っています。
本田選手の伝えたいことはわかる気がします。
では、代表の選手たちはいったいどうしたらいいのでしょうか。
ここではスポーツ心理学の視点からピーク・パフォーマンスをいかに作るかに注目してみます。
そもそもピーク・パフォーマンスとは、持っているスキルの絶対値を指すのではなく、
その状況で要求されるスキルを最大限に発揮できることです。
ある状況でそれぞれの選手が要求されるスキルを十分に発揮するためには、
その状況を適確に理解し、必要なスキルは何かを判断し、それを試合において発揮できる力が必要です。
ここに、ピーク・パフォーマンスを発揮するために、コーチとスポーツ心理学者の連携が必要な理由があります。
ここでは、『どうやって試合で発揮するか』に注目してみましょう。
30年以上に渡り様々なオリンピック選手を指導してきたオーリック博士が多くのトップレベルのコーチにインタビューしたデータがあります。それによるとピーク・パフォーマンスを発揮した選手には3つの特徴があることが示されています。
それは、“コミットメント”、“成熟度”、“セルフコントロール”です。
まず、コミットメントですが、これが高い本気度、意志の強さ、勝てる考え方、マイチーム感、セルフモチベーションなどの源になります。
スポーツ心理学者は、コーチと協力してチーム作りの中でのそれぞれの役割やプレーのスタンダードを作り上げる中で、チームへのコミットメント、プレーへのコミットメントメントのスキルを養い、それぞれの選手の“コミットメント力”を上げていきます。
次に成熟度ですが、ビックゲームやタイトな試合でいつも通りに戦うためには必要不可欠な部分です。成熟度が高いと、厳しい場面でも平静でいられたり、自信、落ち着きを保てたりします。
US五輪委員会やUSテニス協会でスポーツ心理コンサルタントを務めたグールド博士はこの成熟度を育成するために『ライフスキルプログラム』が重要で、
それがすべての心理的スキルのベースになり、ピーク・パフォーマンス発揮にも
大きく関わってくると常々言っています。
最後のセルフコントロールは目的に進むために必要なスキルです。
このスキルが高い選手は、コミットメントと成熟度との相乗効果でどんな状況下になっても最適な考え方と動きができるようになります。
例えば、審判の不当と思われるジャッジがあっても起きてしまったことを受け入れ、
失敗があっても消極的にならずにチャレンジを続け、
チームが良くない雰囲気になってきても流されずに落ち着き、自信を保って
チームメイトを鼓舞することができるでしょう。
本田選手のコメントをスポーツ心理学のフィルターを通して具体的に分析してみると、本田選手が強い日本代表となるためにチームメイトへ強い要求を
伝えようとしていたことが想像できます。
このピーク・パフォーマンスの3つの要素は様々な組織に関わる方々にとっても
同様にキーポイントとなってきます。企業組織においても知識やいわゆる
ビジネススキルのみフォーカスする組織はなかなか組織力を発揮できません。
組織パフォーマンスを発揮するチームには
“コミットメント”、“成熟度”、“セルフコントロール”が高いメンバーが
育成され揃っているのです。
多くの子供たちが競技スポーツに関わる価値は、
競技を通じてこの『ライフスキル』を獲得することにあるのではないでしょうか。