アフター・ザ・ゲーム:勝敗のとらえ方

レスリングの吉田沙保里選手のリオオリンピックが終わりました。その結果は銀メダルでした。試合後のインタビューで号泣しながら、「たくさんの方に応援していただいたのに、銀メダルで終わってしまって申し訳ないです」とコメントしました。しかし吉田選手は五輪3連覇をし、日本チームの主将としての役割もしっかりとこなす、間違いなく『最強のアスリート』であると言えるでしょう。


オリンピックは結果が出て高揚感で一杯の選手と、目標が達成できずに失意の中呆然とするアスリートが隣り合わせに存在する場所です。大会後のメンタル状態を整理するために、USOC(アメリカオリンピック委員会)は、選手たちがオリンピックの開催地へと出発する前から準備をしています。 



 選手たちは、オリンピックが終わった後にも競技を続ける選手は通常のシーズンに、引退を考える選手には自身の気持ちを整理して新たな世界へうまく移行していかねばなりません。



 選手が出発前に観るDVDの中にAfter the Gameというセクションがあります。そこでは、こんなことが語られています。

・チームメイトやスポーツ心理学者と話してみよう

・オリンピック後のトランジション(移行)プランを作成しよう

・帰国後、USOCが主催するアスリートキャリアトランジションセミナーに参加しなさい



 試合後の対処だけではありません。先日『チーム力』の話の中で(リオ五輪、体操・水泳の好成績を生んだ個人競技における”チーム力”)チームケミストリーに触れましたが、バートン教授はMatery-oriented(習熟指向)がある雰囲気を持つチームこそ、敗戦や失敗に対する対処力が強いと発表しています。



 UCLAを10回にわたり全米チャンピオンに導いた伝説のウッデンコーチはそんなチーム作りをしようと心がけました。



 『私はいつも選手に言い聞かせた。自分のできる限りのことをしたと確信できるなら、決して失敗はない。私はベストを尽くした。それが私たちにできるすべてだ』



 そして、こうも語っています。



 『自分が出場したり、コーチとして指導した試合にはすべて勝ちたかった。しかし、それは究極的には出来ないと理解するようになった。コントロールできるのはいかに試合に向けて準備するかであり、私は自分の成功ばかりではなく‟勝利”さえも、十分に準備したかを基準に判断した(勝った時でさえ準備は出来ていたかどうかを大切に判断していた)。そのほうが納得がいったのである』



 吉田選手にも早く立ち直って次に向かってほしいですし、スポーツは勝ち負けがあるからこそ面白いのですが、勝負のとらえ方についてもみんなで考えてみませんか?



ウッデンコーチのUCLAも全米で7連覇を含む10回優勝している最強のチームでした。



 どんな組織においても結果はコントロール出来ません。目的達成へのプロセスの習熟度を明確にしていくことによって、パフォーマンスも上がり、結果が出やすくかつレジリエンス力の強い組織が作られます。