トップアスリートの考え方の技術 vol.5 〜「役割性格」を演じるためのステップ①&②〜

前回のコラムで、トップアスリートは、苦手なことや動揺するようなことがあっても明確な『演じるべき自分=役割性格』を演じ切るスキルを使って、困難な場面を乗り切っていて、その「役割性格」を演じるには

①自分自身をしっかりと知る(見える化)
②自分がコントロールできることを整理する
③なりたい自分像を演じる


の3つのステップがあることをお伝えしました。今回は、そのステップの①と②について解説していきます。

①自分自身をしっかりと知る(自分の見える化)
みなさんはご自身のことをどれくらい知っていますか?当然、自分のことなのだから自分が一番よく知っていると思うでしょうが、人は自分が思っている以上に自分のことを知りません。
  
 例えば、どんな場面で緊張し、緊張したらどんな動き方になるのかも、一人一人違います。こうした考えや反応の傾向や、自身の行動を理解していればその後の対処ができます

このような自己認識を「セルフ・アウェアネス(自己認識)」と呼びますが、これはメンタルスキルの中心をなし、理想のパフォーマンスを持続し、逆境における対処能力を高めるためには欠かすことができません。人は自分自身がわかっていることはコントロールできますが、自覚のないことはコントロールできていないことが多いのです。

トップアスリートの場合には、心理テストを受けてセルフ・アウェアネス(自己認識)を高め、そのデータに基づいて訓練を積んでいることもありますが、テストを受けなくても高められる方法はあります。例えば、試合中のいくつかのシーンでどんなことを考えていたのか思い出してみたり、プレー中のビデオを見たり、周りの人にどのように見えていたかを聞いてみたりすると、自分を客観視し、言語化することが可能になります。

「今日はなんか調子悪いな」で終わってしまう人と、調子が悪い原因を自分で認識できるようになる人では、結果に差が出て当然です。

 「横型比較をうまく利用すること」も試してみてください。自分のコントロール下で目的をもって自分の周りにいる人と自分を比べることで、自分なりの特徴がひとつひとつ明確に見えてくるのです。
 

② 自分がコントロールできることを整理する
 自分の「見える化」ができたら、次に必要なのは自分が「コントロールできること」と「コントロールできないこと」を見分けることです。

私たちがコントロールできるのは「今」や「自分自身」だけです。「未来」や「過去」や「周囲・環境」をコントロールできないのは至極当然のことですが、なかなかこの事実に基づいた行動をとることはできていません。

例えばサッカーでアウェイの観客の罵声が気になる、ラグビーで強い風が気になる。でも、観客の罵声も強い風も残念ながら自分ではコントールできないことです。コントロールできるのはアウェイの罵声の中でプレーしている自分、強風の中でボールを蹴る自分自身のみです。



「注意コントロール理論」を唱えたアイゼンク博士らによると、人は怖いと思うことに意識がむいてしまいがちですが、自分がコントロールできる今やるべきことにフォーカスしなおすことにより、パフォーマンスが向上することがわかっています。

緊張したり、不安な気持ちが高まっている時、過去や未来のコントロールできないことに意識が向かってしまっていることが多いのではないでしょうか。そんな時は、自分がコントロールできることは何か、大原則を思い出してください。

次回は、役割性格を演じるための3番目のステップについて詳しくお伝えしていきます。

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このコラムは、布施努 著「自分の最高を引き出す考え方」から一部抜粋し作成しています。このコラムで記載された内容を、より詳しく事例や解説などをまじえてお知りになりたい場合は、ぜひこちらの書籍をご覧ください。
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