トップアスリートの考え方の技術 vol.7 〜 役割性格を演じるスキル:性格は成熟していますか?~

前回までのコラムで、役割性格を演じるステップをお伝えしてきましたが、「自分も俳優のように役割性格を演じられるのだろうか?」と疑問に思われている方もいらっしゃるかと思いますので、今回は役割性格を「演じるスキル」を獲得するための、心構えについてお伝えしていきます。

まずは質問です。あなたは自分の性格は変えられるものだと思いますか?
私がこう尋ねるとだいたいこの質問に対する答えは半々です。性格は変わらないという人もいれば、性格は変わっていくという人もいます。

実は、心理学では「オリジナルの性格は変わらない。しかし性格は成熟していく。」と考えられています。「性格が成熟していく」 ことは自分の気持ちをコントロールできる領域が広がっていくことであり、「自分の気持ちをコントロールできる領域を広げる」 には、自分のことを十分理解しなければなりません。



例えば、「自分は試合中にミスが続くとカッとなってしまい、イライラしながらプレーして実力を発揮できずに負けてしまう。こんな自分を変えたい。」と思っている人がいたとします。

この人の「ミスが続くとカッとなる」オリジナルの性格は変わりません。そこで、どんな場面でカッなり、カッとなったらどんな動き方になるのか、自分の考えや反応の傾向、行動を理解することが性格を成熟していくために必要になります。

そして、この「今はコントロールできないけれども(前述した「ミスが続くとカッとなる」 性格など)コントロールしたいこと」が見つかった時こそ、役割性格を使ってみる時です。

初めは違和感があるかもしれませんが一流の選手たちも同様に、最初は違和感を感じながら自分とは違う役割性格を演じているのです。素の自分でやれと言われると自分にはできないとすぐに感じてしまうかもしれませんが、その立場に必要な言動だと信じて理想の役割を演じてみればいろいろ変化が起こり始めます。

役割性格を演じることは利き手でない手を使い始めることに似ています。意識すれば自分でもコントロールができ、はじめは上手くいかなくても使っていくうちに徐々に出来るようになります。

はじめは素の自分で思いっきり頑張ればそれで構いません。まずは利き手である右手をフルに使えるようになることが大切です。しかし、右手だけでは自分の得意、もしくはやりやすいやり方ばかりとなってしまいます。いろいろな立場でチームの一員としてベストパフォーマンスを考えたときには、それ以外のことも入っていると思います。その時、役割性格を意識し左手を使ってみることで新しい世界が広がります。

こうして考えていくと役割性格を演じることは、セルフプロデュース力を高めることだと気づくと思います。自分という役者を育てるもう一人の監督としての自分。名優が様々な役をこなすことによって結果的にその人の個性を際立たせているように、自分という役者をもう一人の監督としての自分が育てていくのです。
 
役割性格を演じることは、どんなときも自分の人生を主体的にコントロールしながら進んでいくことです。それは自分らしさを我慢することではなく、まだ見えていない自分に気づき、自分らしさを広げて、ゴールに近づいていくことなのです。

みなさんもぜひ役割性格を演じることをチャレンジしてみてください。

次回からは、縦型比較思考や役割性格を演じることを意識して行動し始めたときに必要になる「目標設定」の方法について詳しくお伝えしていきます。

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このコラムは、布施努 著「自分の最高を引き出す考え方」から一部抜粋し作成しています。このコラムで記載された内容を、より詳しく事例や解説などをまじえてお知りになりたい場合は、ぜひこちらの書籍をご覧ください。
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