トップアスリートの考え方の技術 vol.11  〜どうにかなるという自信には根拠がある~


質問です。あなたはスポーツやビジネスにおいて、難しそうな課題に直面した時に

「聞いたことも、やったこともない。自分には難しいかもしれない…」

と慎重になって、なかなか取り掛かりませんか?
それとも「すぐには出来ないかもしれないけど、何とかなるかもしれないからやってみよう」と考え、すぐ動き始めますか?

実はトップアスリートやどんどん成長する人には、この後者の考え方、何か課題に直面した時に「“なんとなくできそうだな”と思える自信」を持っている人が多いのです。

勝利することや成功することによって得られる自信もありますが、実はそれ以上にそこに至るプロセスの中で一つ一つの小さな目標を達成し続けることで大きくなってくる「自分はやればできる」という自信の方が、将来的に大きな力を有することになります。

よく「根拠なき自信」という言葉が使われますが、バンデューラ博士は一般的な「自信」とは違う、課題に直面した際に何とかなりそうだと思える感じを「自己効力感」と呼びました。

では、この自己効力感をどのように身に着けていくのか。そこで一つの鍵となるのがCSバランスなのです。大きな目標を前にした時に、まず自分は何を目標にするべきかを設定し、そこに据えた目標を一つ一つ達成していくことで、自己効力感が生まれます。

多くの方は自信を身に着けるためには目標を達成することが重要だと考えますが、それだけでは目標を達成できたという自信には繋がりますが、それがそのまま初めてのことに対して「やればできるかもしれない」と思える自己効力感に繋がるとは限りません。
それがたやすくできてしまう体験では、結果に対する期待は高まりますが、失敗が来るとすぐ落胆してしまい、自己効力感は生まれないのです。

自己効力感を育むためには、ある程度のハードルが必要です。ではその「ハードルをどの高さに設定するか。」そこが重要になります。ハードルが高すぎるといつまでたっても達成感・成長感を得ることができず、諦め領域に入ってしまいます。一方でハードルが低すぎるとすぐにつまらない・飽きたという退屈領域に入ってしまいます。ですから、CSバランスを上手く取りながら、小さな目標や最低目標を設定する力が必要になってくるのです。

私は、10日間くらい頑張れば何とかで出来るような目標を考えてみることや、試合中であれば今すぐ頑張ればできる目標は何かを見つけることが有効だと考えています。

こうした習慣を身に着けていくことで、自分が今、何に対して努力していけばいいのかが具体的になり、その小さな目標・最低目標を達成することを繰り返していく中で、未知のチャレンジに対しても「やってみればできるだろう」と考えられる自己効力感が高い状態になっていくのです。
自己効力感の高い状態の人、つまり「きっとなんとかなるだろう」と考える人の思考の背景には、自分で設定した適切なレベルの小さな目標を一つ一つ達成してできた経験があって、“きっとできる”を今度も再現できると考える自信があるのです。そしてこの自信がピンチになっても揺らがない『考え方』を作り出します。

このような考え方が身に着いた人は時に"メンタルが強い"と表現されたりします。大きなピンチになった時でさえ動揺することなく、その時に自分がすべきことを考え実行できる人は、こうした一つ一つの目標を達成し続けることで得た自信を自分の力にしているのです。

これまで説明してきたように、「CSバランス」はパフォーマンス向上させるための目標設定に欠かせない、非常に重要な考え方です。みなさんもCSバランス考える力を身に着け、自己効力感の高い状態に自分を導くことができれば、挑戦が楽しいものになっていきます。成功するためには何よりも努力が必要ですが、上手に小さな目標を作ってあげることで「努力の仕方」を手に入れることができるのです。

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このコラムは、布施努 著「自分の最高を引き出す考え方」から一部抜粋し作成しています。このコラムで記載された内容を、より詳しく事例や解説などをまじえてお知りになりたい場合は、ぜひこちらの書籍をご覧いただければと思います。
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