
布施が特別講師を務める日本陸連主催「ライフスキルトレーニング」。パリ五輪出場・世界選手権出場選手などの学生トップアスリートが受講してきました。彼らがライフスキルトレーニングを受講した後、獲得したスキルをどのように活かして競技に向かったのか、どのようなスキルが選手に効果をもたらしたのか等、ここでは選手の生の声をまとめてお伝えします。
今回のインタビューは、競歩の梅野倖子選手(順天堂大学)です。彼女はライフスキールトレーニング受講後、今季初の日本代表入りを果たし、アジア選手権、世界選手権、アジア大会のすべてに出場。アスリートとしてのキャリアを大きくステップアップさせる1年を過ごしました。いったい、梅野選手にどんな変化が生じたのでしょうか?
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トレーニング受講で気付いた自分に足りなかった『仮説思考』
梅野:(ライフスキルトーレニングを受講して)自分は高校のころからずっと、「実行」と「結果」を繰り返すだけだったんだなと気づくことができたんです。講義を受けたことで、実行して結果が出たあとに、その過程を振り返って「何がダメだったのか、何がよかったのか」を分析し、それを踏まえて、「ここをこうしたら、もっと良くなるんじゃないか」を考えて次の実行に取り組んでいけるようになりました。
―――まさに「仮説思考」(仮説を立てて、それに基づき実行し、その結果を分析して、新たな仮説を立てて、再び実行していくというサイクルを回すこと)の方法ですね。以前は、できていなかったのですか?
梅野:できてなかったというよりは、分析する発想自体がなかったことに気づいたという感じです。練習でも出された内容をやるだけでしたし、一つの試合が終わったら次の試合に向かっていくだけで、そのときの自分の動きやタイムを反省はしても、それをどう次につなげるかまで考えていませんでした。
そこを自分で振り返って、考えてみたり確認したりということが少しずつできるようになり、次の試合に生かせるようになってきました。
大きく変化した『目標設定』の方法
―――そのあたりは、「目標の設定」や関連してきそうですね。
自分も、最初は“大きい目標1つだけ”という感じたったんです。「次の試合でこのタイムを出す」とか「この順位を取る」とか。でも、その途中で「今日はこれだけはやる」とか「1週間で最低限これだけは」といったように、小さい目標を立てられるようになってからは、やるべきことが具体的になって、確実に行動できるようになりましたね。最終的な大きい目標を叶えるために、小さい目標をつくって、それを少しずつ達成することで、大きい目標に近づいていくことができたな、と。
―――具体的に、どんなことをやってみた?
梅野:目標はしっかり考えたなと思います。ライフスキルトレーニングの講義を受けていた段階(2022年12月~2023年3月)では、今年、日本代表になれるとは全く思っていなかった(笑)ので、大きい目標としては「(2024年)パリオリンピックに出場する」とか「(2025年)東京世界陸上に出場する」というのを設定して、その過程で、「代表選考レースとなる日本選手権で結果を残す」とか、「少しでもワールドランキングの順位を上げるために1時間30分台のタイムは出す」とかを考えました。
さらに、それを実現するために…ということで、毎日の練習での一番最低限の目標として「毎日、必ず12km以上は歩く」と決めて実行しました。「どんなに気持ちが入らない日でも最低12kmは歩こう」「一度に歩くのが無理なら、朝と午後で6kmずつに分けてもいいから歩こう」といったように確実に達成していける(小さい)目標を置いたことでクリアできました。
そのほかにも、ポイント練習などでも、「このくらいのタイムで行こう。届かなくても、最低限このタイムはクリアしよう」といったような目標のつくり方ができるようになりました。
―――それは、今までできていなかったわけですね?
梅野:全くできていなかったです(笑)。とりあえず言われた練習をして、試合があるから出て、このくらいのタイムを出すために歩こう、頑張ろうというだけになっていて、「その試合で、何分で歩くために、これをしなければいけない」という考え方ができていなかったし、逆に、目標に向かって段階を踏んでいくことができていなかったんですよね。そこは大きく変えることができた点だと思います。
(2023年11月2日収録)
取材・構成:児玉育美(日本陸連メディアチーム)
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インタビュー全文はコチラ↓のURLからご覧ください。
【ライフスキルトレーニング】受講生インタビューVol.4 梅野倖子:アジア選手権・世界選手権・アジア大会で日の丸を背負った1年を振り返り、自身に生じた変化を語る
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19163/
梅野選手のライフスキルトレーニング受講前と受講後の変化などをより詳細にご覧になりたい場合、ぜひご一読ください。