大谷翔平の成長を導く心的イメージ力

9回に指名打者から投手に変わり、クライマックスシリーズの優勝を決めた際に魅せた日本最速165キロのストレート。見事なバットコントロールで日本ハムの反撃の狼煙を上げた日本シリーズ第三戦のサヨナラヒット。シーズン中は「一番・投手」で先頭打者初級ホームランというマンガの世界のようなパフォーマンスを発揮してきた今年の大谷翔平選手。一体どうしたら大谷選手のような選手になれるのでしょうか。今回はスポーツ心理学の視点から大谷選手の一面を探ってみます。

フロリダ州立大学のエリクソン博士は心的イメージの優劣がパフォーマンスの差を生み出していると指摘しています。心的イメージとは、そのアスリートがパフォーマンスに必要な瞬間のあるべき姿や体の位置や動きを思い描くイメージのことです。スポーツにおける心的イメージの違いとは、どんな動きをすれば最高のパフォーマンスを発揮できるかをどれだけ鮮明にかつ立体的にイメージできるかの違いです。

 

 では、心的イメージを高めるためにはどうすればいいのでしょうか。その作っていくステップは次の通りです。

 

①何が課題なのかを明確にする

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②どうやって克服するのか練習方法を考える

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③努力して継続する

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④試合で試してみる

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⑤分析する

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⑥練習方法の見直し

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⑦再挑戦

 

 

 このサイクルを回していくのに重要なのがフィードバックです。そしてこのフィードバックには外からのフィードバックと内からのフィードバックがあることを認識することが重要です。外からのフィードバックとはコーチなど他者から受けるものですが、内からのフィードバックは自分自身で自問自答しながら感じていくもので、これが自己理解につながります。そしてこの内からのフィードバックの深さが大谷選手の心的イメージを高めている要因だと推測されます。

 

 大谷選手が高校時代に目標設定として行ったマンダラという手法はこの内からのフィードバックをトレーニングするのにとてもいいメソッドです。これは大きな目標をそれを達成するための8つのテーマに分け、それぞれに目標を掲げ、さらにその目標を8つの取り組み内容に分類するというもの。つまり大きな目標に対して64個の取り組みテーマを設定することになります。これにより何ができて何が足りないのかを自覚できるようになり、思うようなパフォーマンスを上げるために必要なことは何かが明確になります。


実際の大谷選手が使用したマンダラ

 

 大谷選手の場合、高校時代からこうした目標設定を習慣化することにより、『今日やるべきテーマを決めて、自己評価する。ダメなところがあれば次はこうやってみようと改善方法を考える』という行動が身についているのだと思われます。

例えば大谷選手は『内の厳しいところが打てるようになって来たら、次は外に逃げる球をどう打つか、緩急をつけられたらどうするか・・それこそが僕が成長できる絶好のチャンスです』と語っていたことがありますが、これこそどのような“結果”に対しても、自分の成長に繋げるフィードバック材料と捉えている証と言えるでしょう。きっと自分のレベルが上がるかもしれないと考えると嬉しくてたまらないのだと思います。

 

 今年、日本中を驚かせてくれた大谷選手ですが、こうした習慣を身に着けていることを考えると、今年はまだ始まりに過ぎないのかもしれません。これからの活躍が楽しみです。