リオ五輪テニス準々決勝の錦織選手とフランスのモンフィス選手の戦いは
タイブレイクにもつれ込む接戦となりました。
まさにメンタルゲームとなった終盤の展開を振り返ってみましょう。
タイブレイクはモンフィスのサービスで開始されました。
モンフィスはここから一気に4ポイント連取しました。
最初のメンタルの注目ポイントは次のモンフィス選手のサービスゲームです。
フォアにいいサービスが入り錦織選手を揺さぶります。錦織選手は粘るものの
返すのがやっとでモンフィス選手のスマッシュチャンス。ところが決めきれず。
逆に絶妙なロブショットを決められポイントを失います。
モンフィス選手にしてみると『これで行ける!』と思った瞬間でしょう。
ところがここにメンタルの罠が潜んでいます。
脳神経外科の林成之先生によれば、『これで行ける!』と思うと脳の中の自己報酬神経群が働き、意志が運動系まで届かなくなりその結果としてパフォーマンスが落ちてしまうことがわかっています。
実際、ここから3ポイントを錦織選手が連取します。
しかし、サービスが移りモンフィス選手は間を取れて落ち着きを取り戻します。
まずはサービスを決め、続けてサービスエースを取ります。
スコアも3-6となり、もう一度サービスも来るのでモンフィス選手自身『これで勝てる』と思ったのではないでしょうか。
人間の思考は放っておくと都合のいいように解釈していきます。
だからメンタルトレーニングが必要なのですが。
ここもスポーツ心理学としてのポイントです。
ところが、錦織選手がその際に何を考えていたか。
『なるべく1ポイントずつプレーしました』とコメントしています。
つまり、意識を小さな最低目標に向けるように頑張っていました。
その結果、いいサービスを続けスコアは5-6となります。
この状態になるとモンフィス選手の内面は『行けると思っていたのに』→『自分は間違っていた』→『もうだめかも』と遷移し、心と連動するモジュレータ神経群がダメージを受け、脳が著しく疲労し、運動機能が著しく低下するのが脳科学でわかっています。
モンフィス選手の眼は泳ぎだしアイコントロールも効かなくなり、不安は増大していきます。
ここで痛恨のダブルフォルトをしてしまい、次も切れの良いサービスを打てずにポイントを落とします。
マッチポイントでもあまり難しくないバックハンドをリターンミスしてしまい敗れてしまいました。
ここから皆さんの日常のパフォーマンスにもヒントがあります。
それは、目標のゴールポイントの設定の仕方にポイントがあります。
例えば、大事なプレゼンテーションがあるとします。
プレゼンテーション資料がうまくできてほっとしてしまう人。
➡実際のプレゼンの時に観客の反応などでパニックになってしまう場合があります
実際のプレゼンテーションの最中にこれでうまく行きそうだなと考えてしまう人。
➡ちょっとした質疑で詰まってしまうかもしれません。
ではどうしたらよいでしょうか。
最後のゴールは抜群の笑顔でクライアントに挨拶して相手のオフィスを去るまでにしておくのです。
そうすることにより、突然のパフォーマンスの低下を防げます。