メジャーリーグも日本のプロ野球も年間王者が決まりましたね。最終決戦という大舞台で、最高のパフォーマンスを出した選手達のインタビューをきいていると、この戦いにどんな準備をして挑んできたのか、それぞれの選手の考え方が見えてきて大変興味深いですね。
さて、前回の「トップアスリートの考える技術 vol.1」では、選手が自分の最高を引き出すためには「縦型比較思考」をすることが非常に重要であることをお伝えしました。しかし、実は縦型比較思考を有効に使うためには、自分にとっての最高の将来像を描くだけではそこに到達できないのです。
ではどうしたらいいのか。
まずは将来像と現在の自分を比較し、何がどれだけ必要かを明確にする必要があります。つまり、将来像から「逆算」するのです。将来像と今の自分を見ることで、今本当にやらなくてはならないことが見えてくるはずです。
一方で横型比較に慣れてしまっている人は、逆算ではなく足し算をしがちです。将来像を基準に考えるのではなく、現在の自分を基準に周りと比べて、他者にあって自分に足りないものを足し算で加えていってしまいます。
足し算で考えると自分に足りないものを加えているのですが、その努力が自分自身の目指すべき将来像にしっかりと繋がっているかどうかがわかりません。そのため、本人は努力を積み重ねているつもりでも、その努力の方向性が的確でないこともあります。
逆算していれば、目指す目標のイメージが常にあるので、時間軸でその時々にどれだけやれば目標に届くかを考えます。一方、ゴールからの逆算をしない足し算では、いつまでにできるようになりたいのかという視点が欠け、ゴールに向かって進んでいるのか不明確なまま努力を積み重ねて、いそがしくしているものの本来のゴールに辿り着かないということが起きがちです。
これは決してその人の能力の問題ではなく単にやり方に問題があるということです。
さらに、横型比較思考には、気をつけなければいけないことがあります。どうしても周囲との比較になるので、結果が出るたびに一喜一憂してしまうという点です。それが最終的に目指したい勝利や成果ではなくても、達成感を覚えて次の目標を見失ったり、反対になかなか結果が出ないとあっさり諦めてしまうような状態に陥ってしまいます。
スポーツ心理学のデューダ博士の研究によると、横型比較が優位な人は自分の能力に疑いが生じたとき、忍耐力が低下し、挑戦を避けるようになることが明らかにされているのです。つまり、横型比較思考の人は諦めやすいのです。
しかし、デメリットばかりに思える「横型比較思考」も、実は有益に活用する場面があります。
次回は「縦型×逆算」を上手にするための横型比較の活用方法をお伝えしていきます。
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このコラムは、布施努 著「自分の最高を引き出す考え方」から一部抜粋し作成しています。このコラムで記載された内容を、より詳しく事例や解説などをまじえてお知りになりたい場合は、ぜひこちらの書籍をご覧ください。
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