1月20日にオリンピックセンターにて、全日本野球協会主催「野球指導者講習会/BASEBALL COACHING CLINIC」にて、「メンタルトレーニングの重要性」をテーマに、およそ300人もの指導者のみなさまに講演を行いました。今回は、メンタルトレーニングの導入となる4つのテーマを中心にお話ししました。
一つ目は、『メンタルトレーニングは個別性が必要である』ということについてです。さまざまなスポーツチームがメンタルトレーニングを行っている事例を紹介し、それぞれのチームによって課題が違い、その課題に合わせてトレーニングのプログラムを組んでいることを知ってもらいました。チームの指導者と相談し練習の中に組み込んでいくと同時に、選手自身が自分でパフォーマンスを上げるために必要なことを個別に指導していることをご紹介しました。
二つ目は、『指導者自身のトレーニングの必要性』についてです。
指導者は、選手が理解しやすいように言葉をブラッシュアップすることが求められます。何気なく使っている言葉も選手にほんとうに伝わっているのか、伝わるような言い方をしているのか考えなければなりません。例えば、練習中試合中に指導者がよく使用する「集中しろ」という言葉は、選手からすると集中するにはどうしたらよいのかを教えてほしいのです。それを具体的に説明できるよう、思考を整理し、学習することが求められます。
三つ目は『ジュニア選手とのかかわり方』です。
ジュニア選手に関わる際、特に指導者が注意すべき態度や声がけについて、ラウア博士の6つの提言を解説し具体的にお伝えしました。さらに、ジュニアの指導者の表情の重要性もお伝えしました。実は子どもたちに対して指導者が真顔で接していると、子どもたちは指導者に恐怖心を抱いていることが多いということが調査で報告されている事例もあります。アメリカのジュニアの指導者の指導風景を見ていると、ジュニアコーチは素晴らしい笑顔で子供たちに接しています。笑顔は子供たちの警戒心を解き、積極性を促す効果があるのです。
四つ目は『ライフスキルの習得』です。
ライフスキルは「プレッシャーの中での問題解決」「時間との格闘の中での挑戦」「実践でのゴール設定」「成功と失敗のハンドリング」「組織と個人のジレンマ」「組織での役割」など、スポーツをする上で、育成にも勝利にも関わる重要な土台となるもので、コーチはライフスキルを理解し指導に取り入れていくことが非常に大切です。スポーツの場で学ぶライフスキルは、将来的にビジネスの場を含めさまざまな場で使えます。ここでは、欧米において多くのスポーツ指導者教本にライフスキルの重要性が記されており、コーチングの基礎となるものであることをご紹介しました。実際、高校ラグビーチームでライフスキルトレーニングを行い、ライフスキルを高めた選手達は、高校卒業後それぞれ大学に進学しラグビーを続け、選手として活躍しながらリーダーシップや組織を動かす力などのライフスキルの高さを認められています。その結果、今年は帝京、明治、慶応の3つの大学チームでキャプテンに選出されています。
60分という限られた時間の中で、メンタルトレーニングについて盛りだくさんのテーマをお話したため、講演後多くの指導者のみなさまから個別にご質問をいただきました。今後も、より多くの指導者のみなさまにメンタルトレーニングの効果と必要性をお伝えしていければと考えています。