中島佑気ジョセフ選手の活躍を引き出した 戦略的なツールとしての『仮説思考』 



日本陸連主催する「ライフスキルトレーニング」は布施が特別講師を務め、パリ五輪出場・世界選手権出場選手などの学生トップアスリートが受講してきました。彼らがライフスキルトレーニングを受講した後、獲得したスキルをどのように活かして競技に向かったのか、どのようなスキルが選手に効果をもたらしたのか等、ここでは選手の生の声をまとめてお伝えします。 

今回のご紹介する受講生のインタビューは、パリ五輪に出場し日本中から大きく注目を集めた中島佑気ジョセフ選手です。中島選手は、ライフスキルトレーニングの中でも特に『仮説思考』を戦略的なツールとして獲得したことがその後のパフォーマンスの向上に影響したと話してくれています。

中島選手は東洋大学2年生時に2期生として2021年12月~2022年3月までライフスキルトレーニングを受講しました。このインタビューは2022年09月に取材された内容ですが、実はライフスキルトレーニング受講後の2022年は中島選手にとって非常に大きな飛躍の年となり、日本選手権で自己新記録をマーク、オレゴン世界選手権男子4×400mリレーのメンバーに選出。世界選手権でアジア新記録・日本新記録を樹立。その後2024年にはパリ五輪で日本代表に選出され、4×400mRで日本記録を樹立しています。

インタビュー全文は下記URLに掲載されていますが、
《受講生インタビューVol.2 中島佑気ジョセフ:活躍の糸口となった経験、更なる飛躍に向けた想いを語る》
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17064/

ここではその中の一部を抜粋してご紹介します。

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戦略的なツールとして使えることに気づいた『仮説思考』

―――ライフスキルトレーニングに参加してみて、強く心に残ったこととか、考え方が大きく変化したことなどはありますか?

中島:もう「これ」と一つだけを選べないくらい、すごく充実していました。特別講師を務められた布施努先生の話は参考になることばかり。まさに、今の自分の血肉になって生きているような感じがしますね。特に印象に残っているのは、「仮説思考」でしょうか。

もともとやっていたことではあったんです。きっと僕だけではなくて、アスリートであれば、多かれ少なかれ似たようなことはやっていると思うのですが、布施先生の講義を受けたことで、それを知識としてきちんと学び、言語化することができたというか…。「あ、自分がやっていたのって、そういうことだったんだ」ということを改めて確認することができましたし、それによって、戦略的なツールとして、その仮説思考を使うことができるようになりました。

例えば、今までは、不調なときやモチベーションが上がっていないときとかに、その仮説思考を使うことができなかったんですよ、ツールとして使えることに気づいていなかったので。でも、講義を受けてからは、どういう仮説を立てればいいのかといったプロセスも含めて、全体をちゃんと把握できるようになったので、効果的に使えるようになりました。「今、あまり調子がよくないな。じゃあ、仮説思考を使って、ちょっと視点を変えてみようか」といった具合です。それができるようになったことは、とても大きかったなと感じていますね。


ライフスキルトレーニングの影響>

―――大舞台で自分をコントロールできないことに課題を感じていた昨年と比較すると、ものすごく大きな変化ですね。この変化に、ライフスキルトレーニングは影響しているのでしょうか? 

中島:間違いなく影響していると思います。去年は、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と試合前に考えすぎて、失敗してしまうことが多かったわけですが、今季は春から、さっき挙げた仮説思考のほかに、最高目標と最低目標を置く「ダブルゴール」の実践や、ライバルがどうとか周囲(横)と比較して気にするのではなく、自分が目指すこと(縦)と比較することに意識を置く「縦型思考」を心がけてきました。


自己新記録を引き出した『仮説思考の使い方』

―――素晴らしいなと思うのが、世界選手権(オレゴン2022) 後も、オレゴンで感じたことを元に、さらに新たな仮説を立てて取り組んでいる点です。帰国後2レースに出場して、どちらも自己新記録でしたね。

中島:ライフスキルトレーニングの言葉を借りるなら、世界選手権(オレゴン2022)を経験したことによって、これまでの仮説をアップデートする段階になったわけです。

これから世界で戦っていくためには自分でレースを組み立てていけるようになる必要があること、また、オレゴンのレースを他国の選手と走ったなかで感じていたことなども踏まえて、そこで僕が立てた仮説が、
「今までやってきた400mの走り方は、前半でピッチを使いすぎているのではないか。後半に強い自分の良さを引き出すためには、前半でもう少しストライドを使ってリズムをつくり、楽に走るようにするといいのではないか」
というもので、その仮説をもとに練習で取り組み、トライ&エラーのつもりで試してみたのが北麓のレース(オレゴン帰国後のレース)でした。

(2022年9月1日収録から抜粋)
取材・構成:児玉育美(日本陸連メディアチーム)

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中島選手が、ライフスキルトレーニング受講後に、仮説思考、ダブルゴール、縦型思考などのスキルを獲得し、それを競技にフル活用していることがわかるインタビューとなっていますね。
全文は日本陸上連盟ライフスキルトレーニング特設サイトhttps://www.jaaf.or.jp/news/article/17064/に掲載されています。中島選手のライフスキルトレーニング受講前と受講後の変化などをより詳細にご覧になりたい場合、ぜひご一読ください。